2011年3月11日に発生した東日本大震災で、甚大な被害を受けた福島県浜通り地区。10年以上が経過した今、避難指示区域の解除も徐々に進み、政府は地域住民の生業の再建や企業誘致に着手し始めている。 一方で、地域住民の心に潤いを与えるべく、芸術・文化を通じた地域活性化のイベントとして、「福島浜通りシネマプロジェクト」を映画24区にて企画。具体的には、映画や演劇で新たな彩りを地域にもたらし、その魅力に惹かれる若者たちが集う流れを作っていきたい──。
そんな想いから、まずは映画や演劇界の第一線で活躍する映画監督や俳優を福島浜通り地域に招聘。地元市民や全国から集まってきた子どもたちと共に、映画というモノづくりに触れることで、将来のまちづくりを考えるきっかけにつながっていければ、と。
と同時に、世界に負けない作品づくりに向けて、働く人々の環境面や人材育成面などにも積極的に目を向ける。それが結果的には、福島浜通り地域の魅力発信と、映像文化産業の課題改善を掛け合わせた地域発展になるのではないだろうか。
そのモデル例になるべく、2022年夏、「福島浜通りシネマプロジェクト」は開催された。
福島県内および日本各地から集まった中高生たちが福島県浜通り地域・双葉町に4日間滞在。映画界の第一線で活躍するプロの映画監督、スタッフのサポートを受けながら、子どもたちだけで映画を完成させる。
2022年8月18~21日、双葉町周辺で行われた〈映画づくり体験〉はA~Cの3つのグループに分けられ、それぞれチームリーダーの映画監督、サブリーダーの若手映画監督を配置。さらにテクニカル・スタッフとして撮影、録音、編集などプロの技術スタッフ、映画24区およびグループ会社のスタッフ、地元からのボランティア・スタッフが参加し、サポートしていく。
1チーム7人、計21人がロケハン、脚本づくり、撮影、編集、ポスターづくり、上映と、映画づくりの全行程を体験する。制作する作品は5~10分。上映会には関係者ほか、地元の人も参加することができる。
- リーダー
- 永田琴
ながた・こと/大阪府出身。2004年「恋文日和」で商業デビュー。代表作は映画「シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸」「いけいけ!バカオンナ~我が道を行け」、ドラマ作品は東野圭吾『分身』『変身』『片想い』、『東京ラブストーリー(2020)』『ライオンのおやつ』など。
- サブリーダー
- 板野侑衣子
いたの・ゆいこ/同志社女子大学4年生。同大学院生ますだあやこと共同で監督した「魚の目」が22年に公開。第24回京都国際学生映画祭で最終審査員賞(行定勲賞)、第15回田辺・弁慶映画祭でキネマイスター賞を受賞。
- リーダー
- 市井昌秀
いちい・まさひで/1976年生まれ、富山県出身。2006年に初の長篇作品「隼(はやぶさ)」が第28回ぴあフィルムフェスティバルにおいて準グランプリと技術賞のW受賞。代表作は「箱入り息子の恋」「ハルチカ」「台風家族」など。「犬も食わねどチャーリーは笑う」が22年に公開。
- サブリーダー
- 金子由里奈
かねこ・ゆりな/2018年に映画「21世紀の女の子」公募枠に選出された「Projection」を監督。19年「散歩する植物」がぴあフィルムフェスティバル入選。21年「眠る虫」公開。「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」が23年公開。
- リーダー
- 吉田康弘
よしだ・やすひろ/1979年生まれ、大阪府出身。同志社大学卒業。2007年、大竹しのぶが型破りな母を演じた「キトキト!」で監督デビュー。「旅立ちの島唄~十五の春~」「かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発』など。NHK特集ドラマ『二十四の瞳』が22年に放送。
- サブリーダー
- 東盛あいか
ひがしもり・あいか/地元の与那国島から京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映画学科俳優コースに進学。主演・監督を務めた卒業制作作品「ばちらぬん」がぴあフィルムフェスティバル2021グランプリ受賞、22年全国公開。